広島県福山市 鞆の浦(とものうら)の「汀邸 遠音近音(みぎわてい をちこち)」は、 全17室の客室がすべて海を望む温泉露天風呂付きの癒しのお宿です。
瀬戸内海のほぼ中央に位置し、小さな港町の風景が江戸期のまま残る鞆の浦は、細い路地が歴史を語り、目の前の仙酔島が瀬戸内海のやさしい美しさを教えてくれます。
2024年5月の【汀邸 遠音近音】(みぎわてい をちこち)宿泊記です。
遠音近音の基本情報
遠音近音の向かいに浮かぶ島はひとつのように見えますが、手前が無人島の弁天島で奥の大きい島が仙酔島(せんすいじま)です。
住所 | 〒720-0201 広島県福山市鞆町鞆629 (ともちょうとも) |
TEL | 0570-025-577 |
アクセス | ■新幹線福山駅から車で約30分 シャトルバスあり(予約制) ■広島空港から車で約60分 |
駐車場 | 送迎車で3分の「ホテル鴎風亭」 の駐車場を利用(無料) |
チェックイン | 15:00 |
チェックアウト | 11:00 |
客室数 | 17室 全室デッキテラス・ 温泉露天風呂付き |
開業 | 2010(平成22)年 |
公式サイト | https://www.ochikochi.co.jp/ |
遠音近音へのアクセス
遠音近音の駐車場
細い路地の先にある遠音近音には駐車場がなく、玄関前に車を着けることもできません。
まず車で3分ほど離れた姉妹館の「ホテル鴎風亭(おうふうてい)」に車を停めます。
鴎風亭の住所:広島県福山市鞆町鞆(ともちょうとも)136
鴎風亭の親切なスタッフさんが送迎車を呼んでくれて、荷物は客室に着くまで手にすることはなく、車道で待機してくれている遠音近音スタッフさんへの連携もバッチリでした。
帰りもお願いすると、車で3分の鴎風亭まで送っていただけるので、小さな路地の街歩きが楽しい鞆の浦で、駐車場が離れていることの不便を感じることはありませんでした。
新幹線 福山駅からの無料シャトルバスの乗り場と時刻
JR福山駅から無料のシャトルバスがあります。(前日までの要予約)
福山駅南口を出て左へ進み、商業施設「さんすて福山」の前の小さな信号を渡ったところが、シャトルバス「乗車口」です。
遠音近音公式サイトには、シャトルバス乗車口から新幹線ホームまで10分かかる、と記載がありますが、piyonは普通に歩いて3分で着きました。
シャトルバスは姉妹館の「ホテル鴎風亭」を経由して所要時間約38分。
福山駅発 | 12:00 | 14:45 | 16:15 |
帰りの福山駅行シャトルバスを利用する場合も、チェックインの際予約をします。
遠音近音発 | 福山駅着 |
8:55 → | 9:33 |
10:05 → | 10:43 |
11:15 → | 11:53 |
13:52 → | 14:30 |
15:19 → | 15:55 |
遠音近音の客室カテゴリー
スタンダードツイン | 39㎡ | 2名 |
コーナービューツイン | 52㎡ | 2~3名 |
ワイドビューツイン ☆宿泊した客室 | 53.6㎡ | 2~3名 |
スイートルーム ☆2024年リニューアル | 65.4㎡ | 2~5名 |
アッパースイートルーム ☆2024年リニューアル | 77.3㎡ ~95㎡ | 2~6名 |
遠音近音へチェックイン
江戸時代創業の「宿屋 籠藤」を再生したという玄関棟は、この奥に鉄筋5階建ての宿泊棟があるとは想像し難いほど趣たっぷり。
靴のまま上がります。
太い梁は当時のままであることや、「宿屋 籠藤」は、十返舎一九・井伏鱒二 等、文人に愛された宿であったこと、「遠音近音」の名前の由来など、スタッフさんの説明を聞きながら宿泊棟へ。
玄関棟と客室棟を結ぶ、ワクワク演出の渡り廊下。
渡り廊下の先の自動扉が開くと目の前に現れる絵画のような景色。
こちらでお茶とクッキーをいただきます。
美味しかった福山市内の洋菓子店のクッキーは、スタッフさんが教えてくださって遠音近音の売店で買い求めることができました。
このあとは、お部屋に案内いただき、朝食の和洋の選択や、夕朝食の時間と貸切露天風呂の予約など丁寧な説明を受けます。
お若い方が多い遠音近音のスタッフさんは、みなさん笑顔で頑張っていらっしゃいました。
宿泊棟は遠音近音開業の2010年に建設されたわけではなく、そこそこ年季の入ったお宿をリノベーションしたことがわかる箇所もありますが、お手入れやお掃除は気持ちよく行き届いています。
遠音近音の客室
4階 ワイドビューツイン
ワイドビューツイン 53.8㎡ はデッキテラス込みの数字なので、お部屋自体は広~い!と感じるほどではなく、ちょうどいい広さでした。
客室の玄関が信じられないほど狭いけど。
気持ち良い琉球畳、120cm幅セミダブルのシモンズのベッド。
デザイン違いの座り心地のいい2脚の椅子。
片方のロッキングチェアーは、飛び出た足がシニアにはかなり危険でしたが、目の前を行き来する「平成いろは丸」と仙酔島の風景とともに心地よい眠りへ誘う気持ち良さでした。
遠音近音さんは、メッセージカードに添えられた折り紙カモメちゃんや、とてもわかりやすい手書きの館内マップ、TV番組表、満潮・干潮・日の入り・日の出時刻、翌日の天気・気温・満潮などのお知らせ、その他客室以外でもあったかいホスピタリティを感じる場面がたくさんありました。
客室からの眺望
5月のデッキテラスは、最高に爽やか。
鞆の浦と仙酔島を5分で結び、20分ごとに運行している「平成いろは丸」の乗り場は、遠音近音から歩いてすぐ。
どの便にも乗客がいて、みんな何しに行くの?と聞きたくなるほど。
5月中旬 朝 5:42のデッキテラス。
日の出に間に合いました。
ウェットエリアとバスアメニティ
遠音近音は全室が海に面した温泉露天風呂付き。
アメニティもかなり充実していました。
- THANNの ボディソープ・シャンプー・コンディショナー
- MARGARET JOSEFINの ヘアリキッド・ヘアトニック・アフターシェーブローション
- 雪肌精の クレンジングオイル・化粧水・乳液
- 歯みがきセット
- 綿棒
- コットン
- シャワーキャップ
- ヘアブラシ
- ヘアゴム
- かみそり
- ボディウォッシュタオル
- ドライヤーはPanasonic ナノイー
- バスローブ
- バスタオル2枚ずつ
- フェイスタオル2枚ずつ
- 脱衣かごも2つ
シャワーブースのボディソープ・シャンプー・コンディショナーは KOSE NATURE&CO
お湯は、低張性弱アルカリ性冷鉱泉。
湯温と湯量は自動管理でお湯が常に出ているわけではなく(かなり残念)、一定の湯量を下回ると自動でお湯はりが始まるシステムです。
湯温はフロントに電話すると調節してくれるそうですが、どの時間に入ってもちょうどいい温度でした。
タオルを掛けるところがたくさんあるのは嬉しい
トイレもゆったりサイズ
クローゼットとナイトウェア
冬に連泊するのはキツイな、と感じる狭めクローゼット。
クローゼットと玄関が狭いのがこの客室のNGポイント。
大・中・小が各2枚セットされた浴衣は、館内どこでも着用OK。
その他、特小・特大・特特大もリクエスト可能。
お部屋のみで着用のフリーサイズのナイトウェアは、二重ガーゼが肌に心地よい上下セパレートタイプでした。
セーフティボックスもこのスペースに暗証番号式ではない古いタイプのものがありました。
無料の貸切露天風呂には、手ぶらで行けるほどすべて揃っています。
ミニバー
ミニバーに、手挽きでいただくコーヒー豆「潮待ちの港ブレンド」があります。
時計の針の存在を忘れ、ただ静かな波の音を聞きながらコーヒーミルを回し、香りを愉しむ贅沢な時間。
客室タイプによって内容が変わる冷蔵庫内もフリーです。
コンセント
コンセントはベッドサイドに1口ずつ。
USBポートはありません。
無料貸切露天風呂と姉妹館へのお湯めぐり
遠音近音の無料の貸切風呂は2つ
遠音近音は全室に温泉露天風呂完備なので、大浴場はありません。
その代わり、無料で利用できる「南風(はえ)」「東風(こち)」2つの貸切風呂が5階にあり、チェックインの際に、予約をします。
早い者勝ちです。
南風 :広めで開放的 シャワー2つ
東風 :シャワー3つ
貸切風呂の利用時間(45分間)
■15:00~22:45
■6:00~9:45
少し大きい方の「南風」を利用しました。
脱衣室も広々ですが、遠音近音は宿泊そのものが「小学生以下のご利用はご遠慮いただいております」だそうです。
タオル、アメニティ、何でも揃っていて手ぶらでOK。
客室と同様のアメニティずらり
piyonが経験した貸切露天風呂史上最大の広さを誇っていましたが、開放感では客室のお風呂に軍配が上がります。
姉妹館への湯めぐりサービス
客室の湯かごにバスタオルだけ持って、姉妹館の「ホテル鴎風亭」と「景勝館漣亭」の露天風呂付き大浴場への「湯めぐりサービス」も無料で利用できます。
広々大浴場がお好きな方には嬉しいサービスですね。
遠音近音の夕食
夕・朝食とも、仙酔島を望む1階のダイニング颯(そう)でいただきました。
アッパースイートの客室のみ お部屋食になるようです。
お食事開始時間は、18:00~、18:30~、19:00~、の3択。
春野菜と蛸旨煮
1品目で遠音近音のお料理が、だいたいわかりました。
煮穴子黒米桜蒸し
お造りは、赤西貝 地穴子など。
細魚(さより)と鰆
美味しかった旬の一品料理 オコゼの唐揚げ
桜鯛しゃぶ鍋
ローストビーフ
鯛釜飯の2膳目は土瓶仕立てのお出汁茶漬けでいただき、食べきれない分はおにぎりにしてくれます。
お米は広島産コシヒカリ。
ジュンサイと黒糖タピオカ
しまなみ柑橘 杏子ムース 鞆の浦保命酒ワインゼリーがけ
全17室というキャパシティから期待していた遠音近音のお料理は、意外にも「う~ん 普通」でした。
感動はありません。
ただ、「素晴らしいお料理ね~」と話す声が聞こえたことも付け加えておきます。
ごちそうさまでした。
遠音近音の夕食での収穫は
①「広島はっさくサイダー」が、はっさく好きpiyonのめちゃくちゃ好みの味で、今後箱買いが始まる予感
②おにぎりにしていただいた「鯛釜飯」は、自己責任で翌日新幹線内で舌鼓。
冷えた鯛めしは最高に美味しいことを再確認できました。
夜の遠音近音も素敵です。
遠音近音の朝食
チェックイン時に和か洋かを選ぶ朝食は、和食にしましたが、夕食よりさらに「普通」でした。
食前にいただいた柑橘のジュースが一番美味しかったかも。
食後の「コーヒーor紅茶」で、アイスカフェオレも選べたのは小さな喜び。
遠音近音の館内いろいろ
江戸時代の旅籠をリノベーションした玄関棟
歴史と港町の風情を生かした素敵な玄関棟
リラクゼーションルーム
玄関棟に、リラクゼーションルーム「座忘(ざぼう)」があります。
赤い椅子は岩盤浴効果のあるヒーリングカウチだそうです。
こちらでは、コーヒー・アールグレイ・カフェインレスコーヒーのカプセル式ドリンクマシーンもフリーです。
14:30~21:30/7:00~11:30
宿泊棟5階に、エステルームもあります。
レンタサイクルも完備
道路が非常に狭い、小さな港町 鞆の浦観光に車は不要です。
BETTER BICYCLESのレンタサイクル
~3時間 ¥1,000
~6時間 ¥2,000
■mixit ミキスト 150cm~
■horizontal ホリゾンタル 160㎝~
宿泊棟のロビーエリア
ロビーでは、コーヒー・紅茶の他、オレンジジュース、レモンはっさくジュース、飲むお酢などがフリーでいただけます。
14:30~21:30/7:30~11:30
客室のかわいいコーヒーカップや、ウェルカムクッキーも購入できる売店。
喫煙所
客室内はすべて禁煙ですが、客室のデッキテラスは喫煙可能で灰皿が置いてあります。
珍しい。
1階のデッキテラスも喫煙可能。
鞆の浦さんぽ
潮の流れが変わることから、古くから潮待ち 風待ちの港として栄え、歴史的な事件や伝説が残る鞆の浦。
今となっては貴重な古き港町の佇まいを残す鞆の浦は、小さな町に半日では周り切れないほど訪れるべきスポットが多く、いくつもの路地を徒歩でまわる楽しさがあります。
「崖の上のポニョ」の舞台にもなり、「サザエさん」のオープニングにも採用されたことからもわかる、ここにしかない美しい風景があるのです。
懐かしい風景があちらこちらに。
この町の歴史を語る、情緒あふれる小さな路地。
重要文化財 太田家住宅
1859年に建てられた鞆の浦のシンボル 常夜燈。
静かに鞆港の歴史を見守り続けてきた常夜燈に、灯がともり夕焼けが空を染めると、いっそう風情ある港町の景色に出逢えそうです。
古民家をリノベーションしたかわいいカフェが点在する小さな港町に、女子はワクワクが止まらないであろう鞆の浦。
曇り空のためpiyonはキレイな夕焼けや星を見ることができなかったけど、夜の遠音近音も素敵なのでぜひ外へ出てみてください。
平成いろは丸で向かいの仙酔島へ
いろは丸事件の蒸気船「いろは丸」を模した「平成いろは丸」に乗って、目の前に見えていた仙酔島へ渡りました。
20分間隔と、けっこうな便数ですが、龍馬の写真も飾ってあるレトロな船内にたくさんの乗客。
往復料金
大人240円 子ども120円
いろは丸事件
1867年(慶応3年)、坂本龍馬率いる海援隊の「いろは丸」と紀州藩の「明光丸」が、鞆の浦の沖で衝突し、鞆の浦へ曳航される途中で「いろは丸」が沈没。
補償をめぐる談判が行われた鞆の浦には、龍馬が滞在した商家の隠れ部屋や、当時の港、寺院などが残り、「いろは丸展示館」で龍馬の足跡をたどれます。
「いろは丸」は今も海底に眠っているそう。
仙酔島までは、遠音近音から徒歩1分ほどの市営渡船乗り場からたったの5分、往復10分のクルーズ。
客室のテラスからは一つの島のようにも見えましたが
仙酔島と弁天島はこんなに離れていました。
チェックアウト前の短時間だったので、行ってそのまままた戻って来ただけですが、海から見る鞆の浦の風景もまた新鮮で、瀬戸内の5月の風も心地よく、1人でも楽しめた往復10分間の船旅でした。
「いろは丸事件」の際、坂本龍馬の海援隊と紀州藩が談判を行った場所となった「対潮楼(たいちょうろう)」から、多くの人がカメラを向けている姿も見えました。
遠音近音とは少し違う角度から仙酔島を眺められます。
平成いろは丸は、仙酔島に着いて乗客を下ろすとまたすぐに出航するので写真を撮るひまもありません。
もちろん、piyon以外の全員仙酔島に上陸されてましたけど。
遠音近音まとめ
チェックアウト前、年配のご夫婦がまどろんでいらっしゃるお姿が映画の1シーンのようでした。
素朴であたたかいホスピタリティは感じますが、ラグジュアリーな雰囲気だとか洗練された接客を期待したり、お料理目当てで訪れると、ガッカリされる方もいらっしゃるだろうな、と思った「汀邸 遠音近音」(みぎわてい をちこち)さん。
客室の露天風呂やデッキテラスから眺める、おだやかな瀬戸内の海に浮かぶ仙酔島の風景は、深く心に刻まれました。
遠音近音をひとことで言うなら、「街歩きが楽しい風情ある小さな港町の、癒しの眺めとおもてなしの心を感じるお宿」でした。