金沢が生んだ仏教哲学者 鈴木大拙(すずきだいせつ)の考えや足跡を知ることで鈴木大拙への理解を深め、さらに訪れる人自身が思索する場ともなる「鈴木大拙館」は、金沢を旅する方に心からおすすめしたい場所です。
仏教哲学など難しいことはピンと来ないpiyonでも、考える、あるいは何も考えない空間に身を置くと、静かな癒しの時間が過ぎていき、心のもやもやがスッキリと晴れていくのを感じます。
この素晴らしい空間を作り出したのは、「金沢建築館」や「MoMA 新館」(ニューヨーク近代美術館)の設計者 谷口吉生氏。
「谷口吉郎・吉生記念 金沢建築館」の記事は→こちらからどうぞ
鈴木大拙館の基本情報
住所 | 〒920-0964 金沢市本多町3丁目4-20 |
TEL | 076-221-8011 |
開館時間 | 9:30~17:00 (入館は16:30まで) |
入館料 | 一般310円 高校生以下無料 |
休館日 | 毎週月曜日 (月曜日が休日の場合は直後の平日) 12月29日~1月3日 他に展示資料入れ替えのため休館日あり |
アクセス | 北鉄バス・城下まち金沢周遊バス 「本多町」停下車徒歩4分 |
駐車場 | 一般駐車場は無し 近隣コインパーキング利用 |
支払い | 現金・クレジットカード |
延床面積 | 631.63㎡ |
竣工年月 | 2011年(平成23年)7月 |
設計 | 谷口建築設計研究所 谷口吉生 |
公式サイト | https://www.kanazawa-museum.jp/daisetz/index.html |
鈴木大拙館へのアクセス
バスでのアクセス
■北鉄バス・城下まち金沢周遊バス「本多町」下車徒歩4分
①「本多町」バス停を降りて兼六園や21世紀美術館とは逆方向へ歩きます
②ローソンの前を通り過ぎたらバス通りから左の小道へ入ります
③左手にある「システムパーク本多町」というコインパーキングを過ぎたら左折します(写真オレンジの矢印)
④MRO指定駐車場と書かれた看板のある大きな駐車場に沿って直進します
⑤駐車場が途切れた先の左手に鈴木大拙館があります
住宅街に突然現れる、といった感じの鈴木大拙館。
車でのアクセス
鈴木大拙館の一般用駐車場はありません。
最も近いコインパーキング「システムパーク本多町」は小さいので満車の確率高めです。
住宅地にあり、狭い道路を走ることになりますが比較的おすすめなコインパーキングは、次の2ヶ所です。
タイムズ金沢21世紀美術館南 | 金沢市本多町3-9 | 21台 | 8:00-18:00 110円/20分 24時間最大料金700円 |
名鉄協商パーキング金沢本多町 | 金沢市本多町3-11 | 27台 | 200円/60分 24時間最大料金700円 |
同じ通り沿いにあるこの2ヶ所の駐車場が、空きがあることが多く停めやすいです。
おすすめは「美術の小径」からの徒歩でのアクセス
元気な方には、崖の上にある兼六園、県立美術館、国立工芸館、県立歴史博物館から「美術の小径」と「緑の小径」を通って崖下の鈴木大拙館へアクセスするルートもあります。
階段の上り下りはあるものの、距離的にはバス通りのローソン側から行くより近く、ふたつの小径は気持ちのいい散策路になっています。
右に県立美術館、左に国立工芸館を正面に見て、間にある小道を写真矢印方向に進みます。
「ル ミュゼ ドゥ アッシュ」店内から見えていた木道の脇の石段を下ります。
そばを流れる辰巳用水の音を聞きながら緑の木漏れ日の中の石段を下って、左手の方に続く「緑の小径」を数分歩くと鈴木大拙館の裏手に出ます。
崖の上から崖下にある大拙館へ降りて行くため、石段の「美術の小径」の上りはちょっとしんどいので
兼六園→兼六園に隣接した金澤神社→道路を渡って「ル ミュゼ ドゥ アッシュ」→「美術の小径」の石段を下る→「緑の小径」→鈴木大拙館→石段の下まで戻って21世紀美術館→石浦神社
というのが時間的にも体力的にもおすすめのルートです。
鈴木大拙館でもらった周辺案内マップは、位置関係がわかりやすくとても見やすいです。
崖上と崖下を結ぶ階段は、国立工芸館とは反対側の石浦神社側にもう1本存在します。
石浦神社から101基の朱塗りの鳥居をくぐった後に、不思議な冷気漂う洋館が建つ深淵の森を抜けて階段を下り鈴木大拙館へ、というルートもおすすめです。
石段を下りた先にある旧中村邸の前からさらに続く「美術の小径」は、金沢21世紀美術館に行く近道でもあります。
藩政の時代には、崖の上に本多家の上屋敷があり、崖下に住んでいた本多家の家臣たちはこのあたりの道を通って毎日出勤していたのかな、などと妄想してしまうほど、かすかに当時の名残を感じる自然の中を行く大好きな散策路です。
本多家とは 加賀藩前田家に仕えていた多くの藩士のうち「加賀八家(はっか)」と呼ばれた大名クラスの重臣の中でも最も禄高の多い5万石を拝領していたのが本多家。 藩主の前田家から姫君のお輿入れが2度もあったというほどの高い位を誇っていました。
当時は本多家の武家屋敷が軒を連ね、今も緑豊かに繁るこの一帯は美術館、博物館、能楽堂などの施設が集まり、文化と歴史の香りがぷんぷん漂う「本多の森」と呼ばれています。
鈴木大拙館とは
鈴木大拙について
1870(明治3)年、現在の鈴木大拙館がある本多町に生まれた鈴木大拙 すずきだいせつ(本名 鈴木貞太郎)は、日本と欧米を行き来しながら仏教の普及と研究に精力を注ぎ、ZENを世界に広めました。
英文での著作も多く、コロナ禍以前の鈴木大拙館には外国人の姿も多く見られました。
鈴木大拙館で何をする?
館内広くはありません。
展示物というのはごくごく少なく、それらを鑑賞するといういわゆる博物館や記念館とは異なり、訪れる人それぞれが自由な心で書や写真、著作から大拙と出会うことにより生まれた心の動きを、自身の思索へとつなげていく場所なのです。
施設の構造に沿って「知る」「学ぶ」「考える」の3つを体感します。
鈴木大拙館の所要時間
鈴木大拙館は広くはないので、ささっと見て雰囲気を感じるだけなら20分、じっくり大拙の世界にふれるなら無限です。
鈴木大拙館での撮影について
本多の森の木々を借景とし悠然と佇む鈴木大拙館は、どこも息をのむほどに凛としてカメラを向けたくなりますが、撮影禁止の場所もあります。
- 動画撮影は不可
- フラッシュ・三脚・セルフィースティックは使用不可
- 展示室内の「展示空間」「学習空間」「露地の庭」の写真撮影は不可
鈴木大拙館にコインロッカーはある?
館内に、無料のロッカーがあり、キャリーケースなど大きな荷物は、受付で預かっていただけます。
鈴木大拙館の館内
クスノキの大木がある「玄関の庭」
館内に入り受付の奥に進むと、大きなクスノキに目を奪われる「玄関の庭」があります。
貞太郎(大拙の本名)少年もきっとこのクスノキを見て育ったのでしょう。
敷き詰められた石が、クスノキを際立たせています。
鈴木大拙館には3つの棟と3つの庭があり、回遊しながら、知り、学び、考える、という意図で作られています。
大拙の世界へのワクワク感が高まる内部回廊を奥へと進みます。
足下の灯りに導かれ、まっすぐに伸びる回廊は参道の役割を果たしています。
「展示空間」と「学習空間」で知る・学ぶ
内部回廊の先にある「展示空間」と「学習空間」は撮影禁止です。
すっきりと厳選された展示は解説などもなく、見る人が感じたままに自由に解釈する、ということでいいのかな、と感じる「展示空間」。
石垣と木々の緑が作り出す「露地の庭」を望む「学習空間」は、大拙の著作や大拙についての記述がある雑誌などで大拙の思想を学ぶ、じっくりと時間をかけたい場所です。
とても雰囲気があり、燃える紅葉の時季はいっそう美しさを増す、小さな「露地の庭」は、「学習空間」からは撮影不可ですが、「緑の小径」からは可能です。
「水鏡の庭」と「思索空間」で考える
外部回廊から見る「水鏡の庭」。
直線だけで構成されたデザインと、3分間隔でボコボコっと現れる波紋と吹く風で揺れる水面の対比が、見る人の心の鏡に何を映すのでしょうか。
人々が自由な想いに耽る、静寂に包まれたシンプルな空間。
本多の森との調和が素晴らしく、時間を忘れ佇んでしまいます。
水鏡の庭に浮かぶ、鈴木大拙館の象徴的な「思索空間」。
「展示空間」と「学習空間」で大拙の思想にふれたあとで、こちらの「思索空間」で「水鏡の庭」を眺めると、落ち着いた心で自己を見つめる穏やかな時間が流れます。
ここは座禅を組む場所でもあります。
雪が降り積もる音が聞こえそうな静寂の白い世界の大拙館もまた趣があります。
季節ごとに訪れると、自身の心の変化を知る機会になるのかも知れません。
雪が積もった後の鈴木大拙館は、訪れる人も少なく、極上の世界が広がりおすすめです。
鈴木大拙館は外からでも見える
周囲の自然と溶け合うように建つ鈴木大拙館は、外からでも見ることができるんです。
開館中に間に合わないような場合でも、「水鏡の庭」と「思索空間」を眺めることができるのも、谷口吉生氏の設計の素晴らしさ。
これも外から覗いたところで、ちょうど水面に波紋が広がっています。
無料で見学できる「松風閣庭園」
鈴木大拙館の脇にある「松風閣庭園」は、江戸初期に作られた本多家の池泉回遊式庭園で、その奥にある「松風閣」は、江戸後期に本多家の上屋敷の中に作られたもので、明治時代にここに移築されました。
加賀八家のお屋敷の中で唯一現存するものです。
無料ですので、飛び石を踏んだ先にどんな景色が広がっているのか、時間が許せば立ち寄ってみてください。
まとめます
計算され尽くしたのであろう、この素晴らしい建築は、来館者を導く回廊に参道の役目があるなど、無機質なコンクリートの建物でありながら、お寺のようでもあります。
鈴木大拙館は、他人と比較する、過去を後悔する、などのさまざまな雑念を取っ払う禅の思想にふれ、心が軽くなる場所でした。
鈴木大拙と訪れる人の心をつなぐ、谷口吉生氏の建築をぜひ体感してみてください。