【追記:2022年1月】「師走の竹千代」を追記しました。
海の幸と山の幸に恵まれたグルメの街 金沢に数ある美味しいお店の中でも特にpiyonが大好きな【竹千代】は金沢市広坂にあるカウンター6席の小さなカウンター割烹のお店。
ひとりで何もかもを切り盛りする店主の竹内さんは大阪の北新地にある「日本料理 かが万」で修行をされ32歳で「おでん 竹千代」を開店、数年後に改装してお店を一新、現在に至り、もうすぐ20周年を迎えるそうです。
若かった大将も50代に突入。今や円熟味あふれるも頑固さは変わらない料理人です。以前のいたって素朴な雰囲気だったお店の頃にこちらを知り、お出汁の美味しさに感銘を受け、うるさい質問にも丁寧に応えてくださる店主のお料理に魅了され続けて10数年。
地元の人だけの、知る人ぞ知る、という隠れた名店でしたが今では平日でも予約が取れるとは限らない人気店となりました。
東京・大阪からも連日金沢グルメが目的の観光客が訪れます。予約が増えるとキャンセルも増える、とお嘆きの店主。
竹千代 の基本情報
住所 | 〒920-0962 石川県金沢市広坂1丁目1-28 広坂パレス1F |
TEL | 076-262-3557 |
営業時間 | 18時~ |
定休日 | 日曜日 |
駐車場 | 周辺のコインパーキング |
支払い | 現金のみ |
予約 | 営業時間以外の電話を推奨 |
竹千代 へのアクセス
竹千代 は金沢の中心地である香林坊や北陸随一の繁華街である片町からも歩いてほど近い柿木畠(かきのきばたけ)にあります。
柿木畠は21世紀美術館からも近いのでグルメ観光客さんは金沢城公園や兼六園をまわって「21美」のあとに 竹千代 というコースもいいですね。
すり身料理で若い観光客に人気の「あげは」が入り口にある、相当年季の入った広坂パレスという小さな雑居ビルを初めて目にしたら、「ホントにここ?」とまぁまぁ驚くはず。
広坂パレスの通路を奥に進むと 竹千代 が静かにひっそりと存在しています。『ひっそり』というのが本当にピッタリです。この隠れ家感がたまりません。
引き戸をがらがらと開けると、こだわりの頑固職人ながらこちらからぐいぐい行くと心の扉を開けてくれる素朴な店主が、カウンターの向こうで迎えてくださいます。
竹千代 のお料理はおまかせコースのみ
他に選択の余地のないおまかせコースがスタートです。
本日もよろしくお願いします。
一品目は限りなく滑らかなぷるんぷるんな胡麻豆腐
まずは竹千代定番の胡麻豆腐。あれ?なんかさらに滑らかに美味しくなってる!
葛粉をバージョンアップされたそうです。
常に向上心を持ってマイナーチェンジも怠らない店主の竹内さん。幸せを感じる滑らかさです。
見た目もぷるるんとかわいらしく、とろーり滑らかでクリーミー、香ばしい胡麻の香りと風味が口いっぱいに広がり、口にした皆さん「しあわせ~」な笑顔になり初っ端からハートを掴まれ竹千代ワールドにずるずるとひきこまれていくのでした。
春の香りに満たされたタケノコと菜の花とワカメの若竹煮
2品目はタケノコです。訪店は3月中旬でしたが西日本ではもうすっかりタケノコの季節なんですね。徳島産だそうです。
タケノコはやわらかく、えぐみは一切なく、菜の花とワカメもちょうどいい塩梅。三位一体となったバランスに感服です。
質問に答えてくださったりお喋りしながらも手と体は常に動いていてpiyonがヘラヘラしているうちにいつの間にかお料理が出来上がり、目の前に供されるので毎回驚かされます。この驚きは初回から現在に至るまで何度訪れても変わりません。
硬さはなくやわらか過ぎずえぐみのないタケノコの茹で方や煮方など詳しく教えてもらいましたが本当に細かい丁寧なお仕事をされてのこの完成度なんだなと思い知るのでした。piyonも毎年、金沢のタケノコ名産地である別所町の道路脇にこの時季だけ開設されるタケノコ農家さんの直売所で朝掘りのタケノコを入手して帰宅後即、茹でてタケノコごはんやタケノコのちらし寿司など作りますが本当に難しく、悲しいかな、いまだに納得の茹で方には至らず。
運が良ければpiyonが日本一と思う「合馬(おうま)のタケノコ」に近江町市場で出会うこともあります。
銀座や京都の料亭で使われるほどの高級品である北九州が生んだ「合馬のタケノコ」ですが成長の早い竹は維持管理が大変で高齢化で生産者が減少し放置された竹林は荒れ放題となり、そのためこのままではタケノコが姿を消す、そんな危機の可能性もあるそうです。生産者さんたちは収穫量を保ち、美味しい合馬のタケノコを絶やさないようにタケノコの販売に加えタケノコを使った加工食品の開発やイベントなど若者の生産者を増やすための努力をされています。ちなみに北九州の竹林面積は市町村単位では日本一を誇ります。
脂の乗ったフクラギをさっぱりと漬けで
フクラギの漬けは、みょうが、にんじん、ブロッコリースプラウトと絶妙なバランスで混ざり合ってめっちゃ美味しい。3月のフクラギは旬というわけではないようですが脂がのってるように感じました。
ふだん竹内さんは謙遜される方ではないのに、piyonの「美味しぃ~♡」に対して珍しくいつもの『自分の腕を褒める』ではなく「フクラギがいいんですよ」とおっしゃってました。謙遜する大将なんて本当に珍しい~‼‼というか初めてだ!びっくり!
いいフクラギが入手できたってことですね。
「フクラギ」とは、出世魚の代表ブリの幼魚の呼称。 成魚であるブリの体長が80㎝~90㎝であるのに対し、40㎝くらいの幼魚を石川県ではフクラギと呼びます。 金沢で初めて耳にした「フクラギ」は、関西で言うところの「ハマチ」でした。 関東では40cmサイズは「ワラサ」。 石川県では、コゾクラ→フクラギ→ガンド→ブリ、と成長につれて呼び方が変わります。 ブリと言えばの富山県の「氷見の寒ブリ」を求めてグルメさんたちが冬に北陸へ集まるため、高値で取引されることになり、石川県の家庭ではフクラギの方が一般的なのです。
コリコリ軟骨も嬉しくてスープも絶品!の鶏団子
これも 竹千代 定番中の定番 鶏団子。
内臓に染み渡るお出汁の美味しさに「竹千代の味だぁ」と感激しながら軟骨のコリコリとした食感も楽しくいただきます。繊細な味のお出汁も最後の一滴までずずずーっと。
気が遠くなるような工程を経て出来上がる珠玉の一品。
この鶏団子いつも思います。「おかわりしたい♡」
竹千代 の味、永遠に守り続けてください。心からそう願います。
珍味はからすみと鰊(にしん)
竹千代 お馴染みのからすみ。
左から1年、3年、4年モノ(ひと口ずつお箸を付けてしまってから撮り忘れに気付いたので本当はもっと大きくてキレイに盛りつけられてます)。
1年と3年もの4年ものの味わいの違いを食べ比べながら、からすみほど日本酒のアテに相応しいものはあるかなと思うのでした。
手間と時間をかけて作ったからすみをパクパクと一気に食べてしまうお客さんもいると、店主お嘆き。
そりゃそうでしょう。piyonなら「ちゃんと味わって食べんかい!」とドツキたくなります、きっと。
いつもちびちびと少しずつ味を確かめながらいただきます。
だって本当にめちゃくちゃ美味しいんですから。
「竹千代」の日本酒は大将の地元、山中温泉の松浦酒造「獅子の里」のみ
竹千代の代名詞とも言える自家製こんにゃく
あ~また 竹千代 に来ることができたな、と思わせてくれる自家製こんにゃく。
弾力のある食感で、鶏団子のお出汁とはまた違う牛すじのお出汁で深いコクのある、これまた染み渡る味わいでウヒヒと笑いがこぼれる一品。
最初のお店を始められた頃、まだ今と違って時間がありこんにゃくを作り出したら面白かったので、とのことでしたが今では 竹千代 の代名詞とも言える自家製こんにゃく。蒟蒻芋は入手するのが難しいそうです。
ありがたーくいただきます。いやいや本当にありがたいお味なのです。
竹千代 で揚げ物は初めて!新玉ねぎの揚げ真丈
これもまた作り方をうかがうとおそろしく手間ひまかけた一品。
スライスした新玉ねぎを煮詰めて裏漉して…… 試してみようとも思いません。
まぁ 竹千代 に手間と時間がかかってないお料理などありませんけどね。
新玉ねぎとお出汁と白味噌の甘くてクリーミーなソース(あん?)はこれまでとは全く違う味わいです。
piyonが 竹千代 で揚げ物をいただくのは初めてで新鮮な感動を味わいました。
澄み切ったスープに浮かぶがんもどき
さつまいも、新ジャガイモ、れんこん、にんじん、ひじき、ごぼう、山の芋、昆布、きくらげ、キヌア、すった胡麻、当然豆腐などなどもっとあったかもですが具材の多いこと‼‼
お上品でありながらも深い深い味わいです。こういうのを滋味深いというのでしょう。
朝、近江町市場の買い出しから戻ると夜の開店時間までずっ~と仕込みをされてるのがよくわかる一品です。
お出汁、澄みわたってるなぁ~。透明です。
キヌアとは南米に生息し、タンパク質・鉄分・ミネラル・食物繊維が豊富な雑穀。飢餓を救う完全栄養食でNASAでも宇宙食として指定されている。骨粗しょう症予防にも期待できるので特に女性は積極的に摂取したいですね。
季節の土鍋ごはんはタケノコご飯
今日は何かな?と訪れるたびに楽しみな季節のごはんはタケノコご飯でした。
お喋りしながら大将はいつの間にか土鍋に火を入れて、いつの間にか火を止めていい塩梅に絶妙なおこげも付いてます。タイマーなしでスゴイな、タイマーありでも失敗するのに、と毎回素人目線ですみません。でも毎度感服します。
この土鍋の季節のごはんスタイル、金沢では先駆けに近いのではないでしょうか竹千代さん。(いや他の店知らんけど)。
タケノコとうすあげはこれ以上はムリというほどに細かく、微妙なお味付けもすばらしいです。タケノコの根元の方をごはんに、先のやわらかい方を若竹煮に使っています。
お代わりもして残ったら包んでくださいます。
翌朝食べるとまたひと味変化もありサイコーな朝ごはん。
おこげサイコー☆たまりません。
春の豆ごはん、初夏の新生姜ごはん 秋のサンマごはん、冬の香箱ガニごはん、もっといろいろあったと思うけど忘れました。どの季節に訪れても大満足。
秋のサンマごはんが人気№1だそうです。ものすごいコクのあるご飯に仕上がります。
最後はお菓子とお抹茶
小豆を炊くときにココアを混ぜたこしあんのお菓子。
最後にチョコレートも隠し味で入っているとか。
どこまでもお上品なお味です。
カウンターの端っこに炉を切って茶釜があり、茶道の心得が相当おありな(piyonは全くないので想像ですが)店主が最後にお抹茶を点ててくださいます。
この「カウンターに炉を切って茶釜がある」というスタイルも最近でこそよく見かけますが金沢では竹千代さんが先駆けではないでしょうか。(いやいや、金沢に10数年前に引っ越してきて最初に行った割烹のお店が「竹千代」なので当時他のお店知らんかったけど、なんですが)
黒文字を濡らして添えてくださいます。
懐石料理の「濡れ箸」というお作法なんですのね。
黒文字とは
クスノキ科の落葉低木で削って爪楊枝にすることから、爪楊枝を黒文字ともいう。
追記:2022年1月 師走の竹千代
2021年もあとわずかで終わるという日に、キャンセルが出たということで1人滑り込ませてもらいましたので、2021年3月に訪れた時と違ったお料理を追記します。
透明なお出汁でいただくカニ真丈
カニ真丈に三つ葉とユズ。
透き通ったお出汁がしみわたります。
美しすぎる「香箱蟹」
「香箱蟹」(こうばこがに)は別料金でいただきますが、piyon以外は東京や関西からの観光客さんだったこの日は全員が「希望しまーす」と手を挙げました。
「香箱蟹」の足は細いので身をキレイに剥くのは大変なお仕事。
すりこぎ棒で身を押し出す、という剝きやすい方法もありますが、写真のようにキレイなお姿にはなりません。
竹千代さんで話を聞くと、丁寧に本当に丁寧にすべてのお料理に気が遠くなりそうな手間と時間をかけていらっしゃいます。
その結果がこの美しさと美味しさなんですね。
塩のみでゆがいた香箱蟹を何もつけずにこのままいただきます。
「香箱蟹」(こうばこがに)とは
「セイコガニ」あるいは「セコガニ」と呼ばれることが多いズワイガニの雌を、金沢では「香箱蟹」と呼び冬の味覚の代表格です。
ズワイガニの雄に比べサイズはぐっと小さく、小さい分ギュっと濃厚な味で、お値段もリーズナブル。
11月上旬に香箱蟹漁は解禁となりますが、産卵期に入る雌のズワイガニを保護するため12月末ごろまで、と漁期はとても短く、まさにこの時季だけのありがたい旬の味覚なのです。
ぷちぷち食感が楽しめる外子(卵)とねっとりとコクのある内子(卵巣)が魅力の「香箱蟹」は、おでんの定番「カニ面」(かにめん)として観光客さんにも人気です。
からすみと珍味の数々
撮影前にお箸を付けたので器が汚れています、竹内先生すみません。
今年、去年、7年前、と仕込んだ時期が異なるからすみ。
当然それぞれ味が違いますが、フレッシュだけどコクのある味わい、なんとも言えない深~い味わい、と、どれも甲乙つけがたい美味しさです。
右は「干しエビとナスと新生姜と万願寺唐辛子とこうじみそ」と「香箱蟹のすみっこに残ったミソを集めてお酒を沸かしたところに入れて煮詰めた」という味噌。
さらに写ってませんが、「甘えびの塩辛」もちょこんとのせてくださいました。
こんなに美味しい珍味のオンパレードは幸せの極致です。
店主のご苦労に感謝感謝。
牡蠣と三陸のわかめ
処理の仕方がめちゃくちゃ丁寧なのでしょう。
臭みとかクセの一切ない牡蠣は三陸のわかめとともに、牡蠣なのにさっぱりと爽やかな一皿でした。
大根と鰊の炊き合わせ
小松菜の下にしみじみと味のしみた大根が隠れています。
大根は昆布と鰹でとったお出汁と干し貝柱を少し入れて炊くのだとか。
なるほど、ひと味違う味わいです。
小松菜はサッと湯がいて氷水にとってから、お出汁に付けておくそうです。
しっかり味のしみた鰊とそれぞれがいいお仕事をしています。
カニの土鍋ごはん
細かく刻んだうすあげがときどき顔を出すお上品なカニごはん。
数年前までは、ぷちぷち外子の食感がたまらない香箱ごはんでしたが、近年は価格高騰により竹千代 では「香箱蟹」ごはんはお目にかかれません。
しかし、次々に客から投げかけられる質問に応えながらタイマーも使わずに、あれ?いつの間に?という感じで土鍋の火は消えて蒸らされて、いつもごはんが目の前に供されるときにはいい塩梅でおこげもしっかり出来ています。
カウンター越しにお喋りしながら、無駄のない動きで一品一品出される丁寧なお料理。
これこそがカウンター割烹の醍醐味であり、竹千代劇場の真骨頂なのです。
竹千代 まとめます
piyonはお料理に集中したいので 竹千代 だけはひとりで伺うことが多いのですが、気さくで自信家の店主がユニークで面白くて、緊張感が漂うお店でもないのでひとりでも気軽に訪れることが出来ます。
金沢グルメを目的に来られる若い観光客さんが、ガッツリわかりやすい味のおでんを求めてお店を選ぶとしたら 竹千代 はおすすめしません。
すべてをお1人でやっていらっしゃるので、ポンポンとテンポよくお料理が出てくるわけでもありません。
特別派手なお料理や、高級食材や、パフォーマンスがあるわけでもないです。
しかし手間を惜しまず真摯に食材に向き合い、丁寧に作り上げて供されるお料理から伝わる竹内さんのプライドが、こちらにびんびん響くのです。
カウンターの前から裏の厨房へ大将が消えて、こちらは次のお料理が出てくるまでしばし手持ち無沙汰、なんていうお店も多い中、本当に小さな空間の中、無駄のない動きで目の前で一品一品を完成させていく、まさに「竹千代劇場」を味わうために足が向く。
グルメの街 金沢の中にあってもそんな貴重なお店です。
(頑固な職人、竹内さんをイジるのもおもしろい☆)
お料理のみのお値段は、香箱蟹の時季などを除いて11,000円ぐらい(2022年1月現在)だと思います。
ごちそうさまでした。
毎回、満足感につつまれてお店を後にします。
連絡なしでキャンセルするお客さんも少なくないそうです。
予約した飲食店にキャンセルの連絡をするのは最低限の守るべきマナーですよね。