2020年、オープンから時を経ずして七尾にすごいお店が出来たとあっという間に金沢で噂になった石川県七尾市にある「一本杉 川嶋」。
予約は数か月先まで埋まってる日本料理の人気店ですが、たまたまキャンセルがあったということで年明け早々の予約ができ、わくわく&るんるんで出かけました。
「一本杉 川嶋」の基本情報
住所 | 〒926-0806 石川県七尾市一本杉町32-1 |
TEL | 0767-58-3251 |
営業時間 | 18:00~ |
定休日 | 不定休 |
駐車場 | 電話予約の際ご確認ください |
お支払い | クレジットカード可 |
予約 | 電話のみの完全予約制 |
お料理 | 18,000円ぐらいのおまかせコース |
「一本杉 川嶋」はどこにあるの?
金沢から『のと里山海道』(無料です!)を走ること約一時間半。能登半島の中ほどに位置する七尾市にある600年以上の歴史を持つ街道・一本杉通りに「一本杉 川嶋」はあります。
七尾と聞いて、piyonがまず思い浮かべるのは国宝『松林図屏風』の長谷川等伯。この地で生まれ、京都へと拠点を移すまで七尾で絵師として活躍しました。毎年春に「石川県七尾美術館」で開催される「長谷川等伯展」で等伯の作品の多くを目にすることができるのはとてもありがたいことです。
「幸寿司」がある七尾は何度も訪れているけれど『一本杉通り』知りませんでした。イメージしていた地方のシャッター通りとは違い、歴史と情緒を感じるしっとりとした通りで、明るい時間にも是非訪れてみたい、と強く思わせる風情を感じます。
古民家とか町家をリノベっていうのはよくありますが、登録有形文化財に指定された昭和初期建築の万年筆屋さんだった建物を、まぁ素敵にリノベーションされたお店はホンモノでした。
建物正面2階の窓はなんと万年筆のペン先をかたどっています。
暗くて映っていませんが1階と2階の間にインク瓶と万年筆がデザインされた外壁。
なんておしゃれな昭和建築!
一本杉通りにはこちらを含めて醤油店やろうそく店など6軒もの登録有形文化財に指定された建物があるそうです。すっごー!
いにしえのロマンをうかがい知ることができそうな、さまざまな歴史が刻まれた街道、絶対明るい時間に来なくっちゃ。
お店に入る前から妄想でなんだかワクワク。
風情ある『一本杉通り』からお店の中へ
妄想はひとまず置いといて、お店の中におじゃまします。
18:15ドアオープンの
18:30一斉スタートです。
女将さんにコートを預け、カウンター席につながるまでの長いアプローチに期待が膨らむ演出♡
一枚板のカウンター(たぶんタモ)の席から見える定番のお庭は、雪が残り小さいけどとっても雰囲気がいいです。
座り心地のよい椅子はCONDE HOUSEだと思います。
素敵にリノベーションされた店内はろうそくが灯されてちょっと薄暗く雰囲気抜群です。
「一本杉 川嶋」のお料理の始まりです
雰囲気はいいですけど、ちょい暗めの店内では、木の板(素敵なんだけど)に小さな文字で印刷されたお飲み物メニューは老眼プレ・シニアには見づらいことこの上なし。
隣の食通紳士も同様のようで老眼鏡を取り出してます。
piyonは唯一なんとなく読めた「マスカット酢の水割り」(たぶんこんな名前)にしてみました。
スタートは中能登の安納芋の羊羹と、piyonはクルマなのでお酒ではなく柚子ジュースが供されました。
甘過ぎずのお上品なお味の柔らかーい芋羊羹。
カウンターの向こうで鰹節を削るご主人?
えっ!こんなに若い人やったん?!
とびっくりしていたら後に大将登場。そりゃそうですわね。笑顔がキュートなイケメン君は
お弟子さんでもなくてお手伝いの方でした。
それしか読めなくて頼んだ「マスカット酢の水割り」は、あら!濃厚で美味しい♡
子供のころ実家で削らされてたものとは違い、中央にある鰹節削り器?も重厚なつくりで美しい滑らかな仕上げで触りたくなります。
右奥に藁が見えてる七輪はなんと万年筆のペン先とインク瓶を模したお店の外観と同じです‼‼
驚かされたのはこれだけではありません。とにかく隅々までこだわりが徹底していてキョロキョロ観察が楽しくて止まりません。
七輪ってことは今の時季なら鰤の藁焼きかなぁ~楽しみ楽しみ♡
このあたりで大将登場。
いつの間にかろうそくの灯は消え照明が明るくなり
It’s show time!!
という演出なんですね。
七草粥です。
大将「私が今朝摘んできました」
ひっ‼大将七草をご自身で摘みにおでかけ。
「外は寒いのでまずは暖まってください」という一品がお上品です♡
修行先は京都ですもんね。
「仁清です」
ひぇっ‼‼‼仁清が出てくるとは!
仁清でお料理いただくのなんて初めてです。
この後も何かのお料理で「〇〇です」の器がありましたが、その〇〇を知らず、聞き返す勇気も音の記憶もなく落涙。
器も相当こだわっていらっしゃいます。いいものばかりでいちいち目にも楽しい。
ポン酢ジュレがかかったアオリイカと雲丹の下にほうれん草(単なるほうれん草ではなくムースか何かだったような)が隠れた一品。(現在はお肌のシミが恐怖のプレ・シニアですので釣りはやめましたが、piyonも以前はエギングで釣ってました。昨今の高まるアオリイカのエギング人気はコロナ禍でさらに加速しているようです。)
とても手の込んだ繊細なお料理なのに素材だけの羅列でなんか申し訳ないです。
見てのとおりさっぱりで美味しいです。
ここからはお出汁ショーです。大将「左手を出してください」
えっ?
手にのせてくれた削りたての香り立つ鰹節を口に運ぶと
うわぁフワフワでなんのえぐみもない。
鰹節はなーんと火を止めてから入れるのです。そして一息ついて濾します。
へぇーそんなんでお出汁取れるん?と疑問です。
お料理はすべて能登の素材にこだわっていらっしゃいますが鰹節のみ鹿児島枕崎産とのことでした。
昆布は『一本杉通り』にある「しら井昆布店」の利尻昆布です。
お出汁を客がよく見えるガラスの器に濾すんですね。
こだわり&演出オンパレードですが嫌味はありません。パフォーマンス重視のお店は、やり過ぎちゃう?と感じるところもありますがこちらはむしろ楽しいです。
大将のお人柄でしょうか。そして演出に見合った腕をお持ちでお味のクオリティがしっかりあるからでしょうね。
濾すのは『ざる+ペーパー+ざる』方式です。
なるほどぉ。素人もメモしとこ。
ま、メモしたところで洗い物が増えるこの方式をpiyonが採用することは一生ありませんが。
なんの味付けもしていないお出汁をいただきます。
うへっ上品なのにしっかりお出汁が出ているやん‼美味しい♡
火を止めてから鰹節入れてお出汁出るの?と疑って申し訳ございません。
鰹節のレベルの高さと削った薄さでこんなお出汁が生まれるのかな。
我が家も利尻昆布だけど…いや素人と比べてはいけません。
注射器状噴霧器でお椀のふたにシュッシュッ。
「誰も触ってないよ あなたのためのお椀ですよ」とか、お給仕のときの
「このお椀はすでに料理が入ってるので持って行って。でも開けてはダメ」
というお知らせの意味もあるのだと帰宅後調べて素人は初めて知りました。
目の前で見せていただき勉強になりました。
蓋を開けるとズワイガニのしんじょうのお椀でした。先ほどのお上品で滋味あふれるお出汁に、一杯の半分も使っているというズワイガニの旨味が、食べるほどに溶け出し、徐々に味の変化を堪能できてなんとも言えない味わいです。
蟹みそも入ってふわふわ。すごい美味しい♡
お料理はまだまだ続きます。
朝どれ真鯛は皮がめちゃくちゃ美味しいです。さっと一瞬湯引きでしょうか。
朝どれという割にはぴちぴち感がない、と三平。
piyonには全くわかりませんけど。
この件について後で質問しました。ド素人が何を抜かすねんとも取られかねなかったけど大将は正直に応えてくださいました。
ド素人が失礼な質問、ご無礼をお許しください。
三平は、『こいつは何を言い出すねん』的な表情でしたが、大将が誠実な対応をしてくださったお陰で帰宅後の半殺しには至りませんでした。
朝どれ真鯛は『一本杉通り』にある「鳥居醤油店」の醤油と自家製ポン酢でいただきます。
「仁清です」の後の「〇〇です」はこの器だったかなぁ。情けない曖昧な記憶。
大将がお店の建物を模したキュートな七輪で藁焼き中。
ライトアップされたお庭に豪快に白煙が噴き出すのが見えるのも演出のひとつでしょうか。藁焼きは期待どおり鰤でした。
藁の香ばしさに包まれた、サイコーに美味しい寒鰤でした。
15㎏の寒鰤ですって!デカい‼
その肩の部分だというドでかい鰤のブロックを藁焼きにして目の前に現れたのは、大きなかたまりすべてが均一にピンク色。
そしてぜいたくにぶ厚く包丁が入り
「おろしポン酢をかけてかぶりついてください」
かぶりつきましたよ。
よっぽど新鮮で漁師さんが正しい血抜きをしていないと大きな部位なのにこんな均一にピンク色というのはあり得ない、と三平驚嘆。ふーんそういうもんなのね。
さすが15㎏。極上の寒鰤をいただきました。
次は輪島塗の棗(なつめ)が登場。大将の「お抹茶は入ってません」のギャグ付きで。
輪島塗、美しいです。
中には炙った鯛を散らしたお赤飯が。とてもお上品なお味でした。
八寸も輪島塗のお重でした。
このへんまでくると、もう詳細な記憶は遠い過去へ。
お正月らしい八寸でした(手抜き表現)
柚子釜に中能登のねっとりなめらかな里いも。鱈の白子が入ってました。
華やかな器の蓋を開けると
穴子の下に春菊と何か(菜の花だったっけ)が隠れていました。香ばしい穴子の焼き加減が絶妙です。
火入れ技術、難しいよなぁ、さすがだなぁ、とド素人感嘆。
美味しくて目にも楽しいお料理の連続でついに一品撮り忘れました。ショック。
お食事の前のその一品は『ふぐと1年寝かした中能登町のさつまいもと神子原(みこはら)のくわい』の揚げ物でした。
お食事はしらすと万願寺唐辛子のごはん。しらすはまたまたなーんと大将自ら志賀町の海で網ですくって採ってきたものと言うから驚きです。
しらすと万願寺唐辛子の美味しさはこの食材が嫌いな人でも美味しくいただけるって感じでしょうか。しらす・万願寺唐辛子・白米、この三位一体ぶりが凄まじいです。能登島の棚田米をぶ厚い蓋(我が家の炊飯用土鍋の蓋の5倍の厚さがあった)の土鍋でうまみを閉じ込めて炊いたごはんはふっくらやわらかなのにべちゃっと感はなくしっとり感だけを残して絶妙な炊きあがりでした。美味しかった~♡
そしてなーんと能登島の棚田で大将自ら手植えをしたお米ですって‼‼‼
藁焼きの「わら」は収穫の際に残った藁。
そういうストーリーも大事にされてるそうです。
いい魚が入るよ、と夜中の2時3時に連絡があるとすぐに穴水の漁港に駆け付ける、ともおっしゃってました。
ほんまかいな、いつ寝てるんやろ大将。
お箸は店名入り専用箱に入れてお持ち帰りさせていただけます。
三角形の持ちやすいお箸、ありがとうございます。
ウォールナット(たぶん)の「床材が余ったのでお箸作りました」とのことです。立派な箱とお箸拭き用の専用ウェットティッシュも用意され、中途半端なことは一切なし。
能登ミルクのパンナコッタと特別な技法で熟成させた柿。
かわいいカトラリーは「草土」のWASABIシリーズでした。
最後は紅白の上生菓子とお抹茶です。
最初から最後まで本当に美味しくいただきました。
まとめます
いやいや、うわさどおりのお店、東京や京都や大阪ではなく、よくぞ七尾で開業してくださいました、とお礼を言いたいです。ありがとうございます。
お父上は加賀屋の総料理長を務めた方で、大将ご本人も華麗な経歴をお持ちなので「高慢で頑固な料理人」を想像していたけどとても謙虚で気さくな大将、川嶋亨氏。
電話予約のときから好印象だった女将さんは大阪の方でざっくばらんなかわいい女性でした。隣に座られていた食通紳士ご夫婦。へぇ~なるほど~なお話を聞かせていただきました。
内装も器も当然お料理もこだわりを持って追及されていながらも、大将ご夫妻のお人柄で居心地の良い雰囲気も持ち合わせた「一本杉 川嶋」。
大将の情熱を感じるお料理美味しくて楽しい3時間でした。
大将の親方からの教え「人間力を磨きなさい」という言葉が印象に残りました。
間違いなく石川の名店として発展されるでしょう。追及したこだわりをさらにお料理に反映されることを期待します。
ごちそうさまでした。
2か月先までの予約を受け付ける月初めには電話がじゃんじゃん鳴り、訪れた人はみんな数か月先の予約を入れて帰るそうです。今回はコロナのこともあり予約を入れませんでしたが季節ごとに伺いたい 「一本杉 川嶋」 です。