【追記:2023年8月23日】「真夏の夜の武作」を追記しました。
【追記:2023年6月10日】「2023年5月お昼の武作」を追記しました。
さわやかな秋空のもと文学に触れようと、金沢三文豪の記念館を訪ねがてら東山散歩をしている途中、ひがし茶屋街の裏路地で偶然見つけた「武作」(ぶさく)さん。
思いがけないランチは、晴れた日にふさわしい豊潤な秋の食材で満たされた幸せな体験となりました。
2022年10月「武作」訪問記です。
金沢三文豪とは 徳田秋声・泉鏡花・室生犀星
「武作」2023年1月の記事『夜の「武作」も大満足』は→こちら
「武作」の基本情報
住所 | 〒920-0831 石川県金沢市観音町1-5-12 |
TEL | 076-255-2034 |
営業時間 | 11:30~14:30(水・土・日) 18:00~21:00 |
定休日 | 月曜日 |
予約 | 電話orテーブルチェック (飲食店予約サイト) https://www.tablecheck.com/ja/shops/busaku/reserve |
支払い | クレジットカード・ 交通系電子マネー可 |
アクセス | 「橋場町」バス停から 徒歩約5分 |
駐車場 | なし |
オープン | 2022年7月 |
公式Instagram | https://www.instagram.com/kannonmachi_busaku_/ |
ひがし茶屋街のど真ん中、と場所がいいので何組も一見の観光客さんが来られるも、お断りされていました。
「武作」へのアクセス
ひがし茶屋街へのアクセス
金沢の人気観光スポット「ひがし茶屋街」の中でひときわ渋い佇まいの「武作」は、赤い紅殻(ベンガラ)格子の町家と柳の木がシンボルの、ひがし茶屋街メインストリートの広場から写真右手方向に進むとすぐの場所に位置しています。
■金沢駅からバスでのアクセス
金沢駅の鼓門がある東口(兼六園口) 6番乗り場から
「城下まち金沢周遊バス」(右回り)乗車
「橋場町(ひがし・主計町茶屋街)」下車 徒歩約2分
金沢駅から徒歩だと約30分です。
ひがし茶屋街周辺にはコインパ―キングがありますが、小規模なところが多く週末は満車状態が続きます。
「武作」はひがし茶屋街の中心からすぐ近く
ひがし茶屋街の中心にある広場から、老舗洋食屋さんの「自由軒」と金箔のお店「箔一」の間の道を入るとすぐ(「箔一」のお隣り)に写真の入り口が現れます。
縄のれんが目印の、通り過ぎてしまいそうなさりげなさ。
暖簾をくぐると、秋の深まりを待ちながら色付き始めたアプローチの木々に迎えられます。
ここに「武作ランチ 和フレンチ 限定食数にて ¥5,500(税込み)」のご案内がありました。
☆2023年8月現在の価格 ■お昼のコース 8,800円(税込) ■夜のコース 16,500円(税込、サービス料10%別途) お昼は大幅価格upとなりましたが、今までがビックリの安すぎ価格でした。
武作の入り口は2つあり、ひがし茶屋街メイン通りの1本浅野川寄りの通りからも、おじゃますることが出来ます。
武作について
武作の店内
和の落ち着いた設えの店内は7席のカウンター席。
個室もあるみたいです。
若き大将がおひとりで迎えてくださいました。
お昼はおひとりで、夜はソムリエさん(イケメンだそうで)が加わっておふたり体制になるそうです。
気さくな笑顔の大将も、お店の雰囲気も、初めてでも緊張感なく食事を楽しめそうな感じでホッとさせてくれます。
武作の大将
以前同じ場所で営業していた「鯛茶漬け 武作」さんはいったんお店を閉じられ、2022年7月に現在の大将で新しく「武作」としてオープンされました。
「禅語の『守破離』(しゅはり)がコンセプトテーマで、和洋折衷のお料理を提供している」と入り口のご案内に書かれていました。
大将の前衛的な髪型も「禅」に由来するものなのか聞いてみたかったです。
「守破離」とは
- 守 基本を忠実に身につけ
- 破 鍛錬を重ねた上で型を破る
- 離 自分独自の世界を確立する
東京でフレンチを20年経験されたのち地元金沢に戻られた、脂がのった42歳の料理人は「離」の段階にあるのでしょう。
「武作」のランチは和フレンチ
わくわく和フレンチの始まり
無駄なものはない清潔感あふれる美しい厨房。
カウンターが畳です。座席じゃなくてカウンターの上が畳です!
一献のごあいさつということで「福をおとりください」。
ノンアルコールを選択し、福と書かれた小さな桝でいただいたのは、さっぱりとした甘酒でした。
日本酒は「おんな川」。
神無月の前菜盛合わせ
前菜から、自然と感嘆の声があがります。
器も素敵。
キャビアがのった富山の白エビにはゆずの香りで、厚岸産の牡蠣にはライムの香りで、とさっぱりいただきます。
九谷の器に盛りつけられているのは、煮たイカと甘海老と加賀蓮根の他に滑らかなムースのようなものが見えますが何だったのか早くも記憶ははるか遠い彼方へ。
とにかくどれも手の込んだ美味しいお品で、前菜から打ちのめされたことはハッキリと記憶しております。
白甘鯛の松笠焼き
「白甘鯛です」
と聞いても、へぇー、と薄~い反応しかできませんでしたが、鱗がカリッカリに焼かれた白甘鯛は身が柔らかくもしっかりとして皮も旨味があり、春菊のソースとフェンネルのピュレと葉っぱから取ったオイルをまとって絶品の一皿でした。
帰宅後白甘鯛の美味しさをさらりと報告すると、「白甘鯛は超高級魚や!本来金沢では手に入らん魚や!」釣りオヤジ三平の怒りが爆発。
魚の知識のない客に白甘鯛だと言っても張り合いのない反応をされた大将の胸の内を慮っていました。
超が付く高級魚のため、豊洲でも料亭などにしか回らないそうで、長く東京にいらっしゃった武作の大将は特別な入手ルートをお持ちなのかもしれません。
愛媛の海で釣った経験があるという三平によると、ひ弱そうに見えるけど力強い魚だそうで、貴重な魚をいただくことができたのだとあらためて感慨に浸ったのでした。
加賀蓮根のすり流しとキノコの汁物
続いては加賀蓮根のすり流しに石川県産の花びらダケやなめこなどのキノコを合わせ、菊の花びらを散らせた汁物です。
とってもお上品なお味付けで、旬のキノコそのままを存分に味わって、という意図が伝わります。
水牛の角でできているという個性的なスプーンは、ワシントン条約が頭をよぎりましたが象牙じゃないから大丈夫なんですね。
石川県産の鰆は岩海苔のソースで
続くお魚は、東山に190年の伝統を持つ高木糀商店の塩糀に漬けて串焼きにした石川県産の鰆を能登岩海苔のクリームソースでいただきます。
赤い粉は唐辛子粉かと思ったら、甲殻類の殻と頭から作るパウダーを塩と合わせたもので彩りと味のアクセントを添えていました。
魚も繊細なお味のソースも非常に美味しい!
極上のお料理の連続に、もうこのへんから脳内は相当な興奮状態に突入します。
牛ほほ肉の煮込みには白子がドッカン
花穂が散らされた和牛ほほ肉の煮込みはホロッホロで柔らかくお味も良く、さらに蒸した北海道の白子がドッカンとのっています。
白子を蒸すと小さくなるけど、このドッカンぶりは元が相当でかいのか、などとプレシニア女2人がコソコソ話すほどの大きさでしたが、低温調理で火入れをすると素材の持ち味を生かしたままのふんわりの仕上がりになるんですね。
もっと寒くなる旬の真鱈の白子のようなねっとり濃厚なタイプではなかったけれど、白子が苦手な人でも食べられそうな、下処理をしっかりされているんだろうなぁという美味しい白子でした。
最後は出汁茶漬けだけかと思ったら
そのままでもお茶漬けにしても、とイクラとウニと木の芽がのったごはんが登場です。
白山の特別なお米は、お茶漬けにも合うように硬めの仕上がり。
ごはんは大中小と選べ、おかわりもできました。
途中からかつお出汁の効いた出汁茶漬けにすると、また何とも言えない味わいでするするといただけました。
そして驚くのは、アップルジンジャーでいただくお魚たち。
はちめ、アオリイカ、幸神目抜け(コウジンメヌケ)。
最後の最後まで本当に美味しいお魚たちでした。
ここでも聞きなれない魚の名前を聞いても「へぇー」だけな料理人さんにとって張り合いのない、うすーい反応しかできない我々でしたが、「幸神目抜け」は超高級魚だそうで、またもや釣りオヤジ三平の怒りを買いました。
確かに「しっとり脂ものって身離れが良く甘くて、めちゃくちゃ美味しい♡」とは思いましたが、メヌケの中でも最高級なのが「幸神目抜け」なのだそうです。
デザートは柿にシャインマスカット
シロップに浮かぶ柿と、下に隠れているシャインマスカットは、フルーツをカットしましたドーン、ではなく丁寧なお仕事をされていて、期待以上のお料理の数々の余韻を残しながら本当にごちそうさまでした、と感謝のデザートタイムになりました。
お椀の蓋にかけられる霧吹き、こちらではデザートをのせる塗の受け皿にかかっていました。
追記:2023年6月10日 「2023年5月お昼の武作」
2023年5月のお昼の武作さんをご紹介します。
すっきり整然とした厨房に、お料理への期待が一層高まります。
毛ガニと赤イカの柚子酢掛け・とうもろこしの冷製すり流し
輪島の毛ガニと岩もずく、島根の赤イカ、沖縄の海ぶどう、とぜいたくな酢の物は、岩手の柚子を使った柚子酢掛け。
初物のとうもろこしの冷製すり流しはさっぱりなのに甘くてコクがあります。
まずは初夏らしく、いいスタートです。
スマガツオのたたき
氷見のホタルイカ、地物野菜と初夏の野菜とともにいただくのは、いわゆるカツオとは非なるスマガツオ。
全身トロとも称される、なかなかお目にかかれない高級魚スマガツオと共に、旨味充分なホタルイカと旬の野菜たちを、淡路島産の新玉ねぎを濃縮させた白と、青森のリンゴと生姜を使った黄色の2種のソースで夏らしく楽しみます。
加賀れんこんのすり流し
石川県を代表する加賀野菜のひとつ加賀れんこんは、ビタミンCや食物繊維が豊富で、でんぷん質が多く粘り気が強いのが特徴。
郷土料理が、れんこんと相性がいいという大葉のオイルと花穂をアクセントに、繊細なお味に昇華されています。
そしてこのホーローのスプーンは最後の一滴まですくえる優れものでした。
真鯛の焼き物
地物の真鯛には、グリーンアスパラとアスパラソバージュを添えて、輪島の岩海苔のクリームソースがバランスよく味をまとめています。
フランス産のアスパラソバージュとは、土筆のような野菜だそうです。
旬のお味が続きます。
和牛ほほ肉の煮込み
ゼラチン質を纏った和牛ほほ肉の煮込みに北海道産のウニで「ウニク」と言うのだそうです。
極上のコラボは京都のミニ青梗菜といただきます。
5月なのでかしわの葉っぱでくるんで蒸しあげられたほほ肉は、コラーゲンたっぷりのぷるぷる。
ごはんと出汁茶漬け
土鍋でタイミングよく炊き上がったごはんには、毛ガニとイクラ。
このあと出汁茶漬けで、という大将のお言葉を忘れそうになるくらい、お出汁登場前にお箸が進んじゃいます。
お米は石川県小松市の蛍米。
蛍米とは 霊峰白山が源となる豊かで清らかな川に蛍が舞う山間地で、減農薬・減化学肥料で栽培されたコシヒカリ
毛ガニもイクラも残りわずかとなったところで、「そうそうお茶漬けせなあかん」とハタと我に返ります。
うーん、どちらも甲乙つけがたく美味。
デザート
デザートの甘夏とイチゴのゼリーは加賀棒茶でさっぱりといただきます。
武作さんはいつ来てもお昼も夜も、どれもこれも最後まで美味しくて大満足。
ごちそうさまでした。
追記:2023年8月23日 「真夏の夜の武作」
地物縞エビと白海老タルタルとそのビスク
2023年7月の夜の武作さんのお料理をご紹介します。
一品目は、二段のお重で登場。
甲殻類のアラを濃縮したお出汁に豆乳を加えたまろやかなビスクは、甲殻類のパウダーを振っています。
エディブルフラワーがかわいい、地物の縞エビと白海老のタルタルに大葉のソース。
香りもいいです。
真蛸とスマガツオ、夏野菜椀
地物の真蛸、香川のスマガツオ、北海道の帆立貝柱に、ペースト状にした赤・黄色・緑の地物野菜。
青森のリンゴと生姜を冬の間にソースにしておいたものが、段々熟成してコクが増すのだそう。
アクセントに秋田のじゅんさい。
珠洲鮑の肝和えと海ソーメン、出汁のジュレ掛け
珠洲(石川県珠洲市)から直送の雌の鮑。
緑色は肝のソース。
下には海藻の海そうめん。
高知のフルーツトマトをソースとして合わせています。
冷製二種玉蜀黍のスープと雲丹
黄色いゴールドラッシュと白いホワイトショコラの、濃厚な2種のとうもろこしのスープに北海道のムラサキ雲丹。
うなぎと焼き茄子のテリーヌ
国産ウナギと焼き茄子にした京都の茄子を、プレスにかけて固めたテリーヌ。
フルーツトマト、スナップエンドウと共にそれぞれの食感を楽しめます。
甘鯛とマイクロリーフのサラダ
甘鯛の鱗焼きとマイクロリーフに冬瓜とユズのドレッシング。
上からカラスミがぱらぱら。
武作の大将は、本当に鱗焼きがお上手です。
マナガツオの味噌漬け、内灘浅利の出汁餡
串焼きにしたマナガツオの味噌漬けには、内灘(石川県内灘町)のアサリの出汁にオリーブオイルを合わせて乳化させたソース。
青菜は京野菜でした。
熊本A5等級シャトーブリアンとサマートリュフ
シャトーブリアンにはマデラソース。
サマートリュフがかかっています。
美味しくないわけがありません。
これはお肉とソースが引き立つ色の器でいただきたかったな。
タコと生姜の土鍋ご飯、赤いか、車鯛、いくら乗せ
炊き上がりました~と見せてもらう土鍋ご飯はタコと生姜。
赤いか、車鯛、イクラをたっぷりのせていただきますが、このあと出てくるお出汁茶漬けにした方が断然美味しかったです。
水菓子 加賀棒茶
最後はさっぱりと、白桃、シャインマスカット、巨峰、ブルーベリーのジュレ掛け。
控えめだけど気さくな大将の、渾身の夜のコースをいただきました。
まだまだ今後の進化に期待できると思います。
ずっと応援したい武作さんでした。
まとめます
仕込みに手間ひまかけているんだろうなぁと容易に想像できるほどテンポよく提供される美味しいお料理は、金沢の旬の味を始めとして、フレンチのソースでいただく高級魚など金沢ではお目にかかれないものもいただけてランチタイム5,500円という高いコストパフォーマンスに驚かされ、本当に大満足の内容でした。
夜はさらにバージョンアップした全12品のおまかせコース(15,000円)がいただけるそうです。
☆2023年8月現在の価格
お昼のコース 8,800円(税込)
夜のコース 16,500円(税込、サービス料10%別途)
わかりやすい高級食材を贅沢にふんだんに使って客を唸らせるお店も増えましたが、そんなお店とは一線を画す「武作」は、まだオープンから4か月、いずれ予約困難店になることも必至だと思われます。
お料理はもちろんのこと、静かな大将のお人柄で会話も楽しく居心地もよく、目を奪われる美しい厨房など魅力が詰まった「武作」さんでした。